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世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか

アートってなんの役に立つの?

と思ったこと、ありませんか?私はあります。

美術館へ行くことが好きです。年に数回足を運びます。しかし、私の中ではアートは趣味で鑑賞するものであり、ビジネスとは全く関係のない分野だと思っていました。

しかし書店で見かけたこちらの本。題名は「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか」。ビジネスにおけるアートの立ち位置を知るために読んでみました。

   

この本の内容

近年、伝統的なMBAへの出願数が減り、代わりにアートスクールへ通うエグゼクティブエリートが増えていると報じています。

「 The art school MBA that promotes creative innovation(美術大学のMBAが創造的イノベーションを加速する)」と題した記事で、いわゆる伝統的なビジネススクールへのMBA出願数が減少傾向にある一方で、アートスクールや美術系大学によるエグゼクティブトレーニングに、多くのグローバル企業が幹部を送り込み始めている実態を報じています。

位置74

その理由を解説しているのが本書です。

理由を著者は3つに分けて解説しています

1.論理的情報処理スキルの限界

2.自己実現欲求市場の登場

3.システムの変化にルールが追いつかない社会

一番について。これまでの経営では、論理的スキルが尊ばれてきました。しかしそのスキルは、変化が大きい社会では大きな力を発揮できないと述べています。

論理的思考は、いわば正解を出すスキルです。しかし変化の大きい世界では、起きた問題に必ずしも正解を出すことはできません。過去に前例の無い問題に、無理やり正解を出そうとすると、決定ができずに経営は停滞することになります。

       

二番目は、世界的な経済の発展により、消費者の行動がこれまでの単純な所有欲求ではなく、自己実現欲求(自分がこうありたい、こう見られたい、という欲望を叶えたいという欲求)を満たすことに変化していることです。

センスや商品の背景にあるストーリーが稚拙であれば、その商品は選ばれることはありません。本書ではAppleを例として上げていますが、AppleってもはやPCの会社ではないんですよね。Apple製品を持っている人はオシャレだ、思ってもらえるような、ファッション性も兼ね備えたブランドです。

     

三番目は、世界の変化にルールが追いついておらず、利益追求のみを目的としたビジネスは危険であるため。これまではグレーの領域で利益を出すようなビジネスがありましたが、これは今後通用しない可能性が高い。ルールが制定されることが遅いのであれば、ビジネスの軸をどこに置くのかが問題になります。日本には三方よし、という言葉がありますが、「真・善・美」に従って、消費者や会社員に不利益を出さないようなビジネスモデルこそが、変化の大きな社会で生き残ることになります。

   

   

「美意識を鍛える」はエリートだけのもの?

さて、本書は美意識を鍛える有用性が繰り返し述べられています。

特に、美意識は意思決定で多くの人を導く、リーダーと呼ばれる人々に必要なものであるのは間違いないでしょう。

この本を読んだ私はというと、人の上に立って決断をするような立場に現在ありません。それでも、美意識を鍛えることは自分自身の役に立つのでしょうか。

私は、役に立つと思います。理由は、「真・善・美」に従った意思決定は、自分自身や周囲の人間を幸せにするために必用だと思うためです。

      

私は薬剤師の仕事をしているので、薬剤師の現場をもとに考えてみます。患者さんの薬の正誤を判断するだけならば、AIに任せれば良いと思います。しかし実際は、自分で考えることが必要になるタイミングが非常に多いものです。

患者さんの微妙なニュアンスから、薬が本当に飲めているのかを予想したり、服薬に問題があるならば解決策を一緒に考えてあげる必用があります。薬を出す、だけで終わらず、その人にあった病気の改善法や、生活習慣病の改善方法を提案することも大事な勤めです。

本書でも、AIは判断には優れているものの、「フレーム問題」があるため、人間の微細な状態をすべて判断の中に加えることができないとされています。

       

そこで必要になるのは自分の頭で考える軸であり、この患者さんにとって本当に必用なものはなんだろう、と考えることではないでしょうか。

それは業務のマニュアルでは絶対に達成できないものです。本書では「真・善・美」に基づく価値判断の必要性が繰り返し述べられていますが、「真善美」とはつまり、相手の幸せを願うことではないかと思いました。

「美意識を鍛える」というと少しとっつきにくくなりますが、要は自分のスタイルを持つ、ということです。自分の頭で考え、自分が良いと思った決断をできるようになれば、たとえエリートでなくたって日々の仕事の質が上がるのではないかと思っています。

   

美意識の鍛え方について

美意識の鍛え方として山口さんが挙げられているのは、「VTSという美術品を鑑賞するセッションを行うこと」「文学・詩を読むこと」「マインドフルネス」などです。

もちろん美術品や文学に親しむことは自分の軸を作るのに必用だと思いますが、これは前提として、自分の頭で考えて答えを出せることが前提です。

自分の頭で考えることなんて難しくない、と思うかも知れませんが、これが意外と難しい。私の場合だけかも知れませんが、ついつい問題が起きたときに自分の頭で考えず、すぐにスマホで答えを探してしまいます。美術品であれば、前提知識を入れずに見ることが推奨されていますが、スマホで絵の解説を読んだりしては意味がない。もっと言えば、頭で考えたことを言語化できなければ意味がない。

何度も繰り返すことで言語化するトレーニングを積むことはできますが、もっと良いトレーニング方法があると思っています。

それがこちらの、0秒思考にかかれている「1分メモ書き」。1分間でA4用紙に思い浮かんだことを書く、という思考のトレーニングです。

美意識を鍛えるとは、いわば自分の直感的な判断力を鍛えることであります。それは、頭の中に思い浮かんだことをきちんと言語化して、認識することであります。これは0秒思考に書かれている内容と一致しています。

私は、本書の美意識の鍛え方と並行して、メモ書きを行うことがしばらくの目標です。

     

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