Kada(@Kada_Se)です。
激ヤバ小説を読みました。
本日紹介するのは、「教団X(中村文則)」。
最初に読んだ感想は「何かよくわからないけど凄いものを読んだ気がする」でした(頭真っ白)。
ピース又吉さんといった芸能人がアメトーク!で絶賛したことでも話題になった小説です。
本書で描かれているのは、2つの教団の対立、本筋とは(一見)関連の無い難解な独白、そして結構エグめの性描写。
読む難易度は高く、間違いなく人を選ぶ純文学です。
なのに何故か、読み終えたあとに静かな感動がある謎の小説です。勝手に紹介したいと思います。
もくじ
教団X(中村文則)ってどんな小説?
ふたつの対立軸に揺れる現代日本の虚無と諦観、危機意識をスリリングに描く圧巻の大ベストセラー!
突然自分の前から姿を消した女性を探し、楢崎が辿り着いたのは、奇妙な老人を中心とした宗教団体、そして彼らと敵対する、性の解放を謳う謎のカルト教団だった。二人のカリスマの間で蠢く、悦楽と革命への誘惑。四人の男女の運命が絡まり合い、やがて教団は暴走し、この国の根幹を揺さぶり始める。神とは何か。運命とは何か。絶対的な闇とは、そして光とは何か。
宗教、セックス、テロ、貧困。今の世界を丸ごと詰め込んだ極限の人間ドラマ! この小説には、今の私たちをとりまく全ての“不穏”と“希望”がある。
テレビ番組で読書芸人にも絶賛された著者の最長にして圧倒的最高傑作がついに待望の文庫化!
Amazon内容紹介より
対立する2つの教団と2人のカリスマ、その合間で翻弄される4人の男女を描いた小説です。
宗教的な題材を扱いつつも、前半の謎が謎を呼ぶストーリーと、後半のスリリングな展開とのバランスが良く、非常に面白い内容です。
私の初見のときは、一気読みでした。めっちゃ面白くて、続きが気になってしょうがない。私は普段23時までに就寝するのに、気づいたら夜中の3時とかでした。
それぐらい面白い小説なんですが、人には決しておいそれと勧められません。
理由は、作中で何度も出てくる性描写。作中の女性たちが数えきれないぐらい「〇〇〇〇~~~~!!!」(書けません)とか叫ぶんですよ。
そりゃあ、合わない人には本当に合わない小説だと思います。Amazonのレビューも荒れるわ、こりゃ。
本書が『性欲』という人間の根源的欲求についても踏み込んで書いているためやむを得ない面もあるのですが・・・。
純文学に慣れてない方は、読み進めるのを躊躇してしまうかもしれません。
しかし、それを加味しても読む価値のある小説だと思っています。
教団Xは難しい?一緒にこの本を読むのがお勧めです。
さて、読み終えた後にAmazonやネット上のレビューを見ていると、「難しい」「何言ってるのか分からない」といった評価を散見しました。
理由は、登場人物たちの独白が何度も描写され、その内容が原子論、仏教、戦争、貧困と多岐にわたるためだと考えられます。
私も、1回目に読み終えたときはこのこの小説の言いたいことを理解できませんでした。
2回読んで初めて、著者が伝えたかったことが少し理解できるようになったという感じです。
事前知識の有無で、評価が分かれる小説だと思っています。
1回目と2回目の間に、戦争関連の書籍を読んだことが本書の理解度の向上につながりました。
ちなみに私が読んだのは「日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 (中公新書)」です。
仏教やキリスト教といった宗教に対する基礎知識と、太平洋戦争の知識があれば、この小説をより楽しむことができます。
そんな難解な『教団X』ですが、私は今まで読んだ本の中でも10本の指に入る名作だと思っています。
教団Xとは、生命の賛歌であるーこの小説が伝えたかったこと
※ここから先はネタバレを含みます※
教団Xでは、テロ、貧困、セックス・・・等々、人間の暗部が描かれます。
しかし、そんな人間の醜悪さを描いた後にも関わらず、最後には生を肯定する展開が素晴らしいと思っています。
本書で描かれるメッセージは、上記の通りです。
でも、その意図に到達するまでのハードルが異常に高い。ハッキリ言って10人中8人ぐらいはわけ分かんなくて憤慨してブックオフ行きになるんだと思う(多分)。
主人公は、教団の間で翻弄される4人の男女です。
しかし、本書で中心的存在になっているのが、それぞれの教団の指導者ともいえる『松尾』と『沢渡』です。ここでは、松尾が光、沢渡が闇と、明確な書き分けがされています。
対して、4人の男女はというと、生きようという意志と、破滅したいという願望とを両方併せ持っています。要は、普通の人間たちです。
だからこそ、松尾と沢渡の両方に畏怖の念を抱き、同時に惹かれてしまう。
本書で重要になってくるのは、松尾と沢渡の『生』に対する考え方の違いです。
松尾は、この世界のシステムの複雑さ、原子論で運命づけられた生き方に絶望することなく、生きることを楽しんでほしいと語っています。
対して沢渡は、自分自身の異常性に絶望し、生きることに意味を見出せずに自決しました。
この世に完璧な聖人は存在しません。人間である限り、誰もが松尾と沢渡のような二面性を併せ持っていると思っています。だからこそ、正反対の二人のどちらにも惹かれてしまう。
しかし、著者は最後には闇ではなく、光を選んでほしいとメッセージを発しています。
世界にはテロや貧困、戦争があって、絶望的なほど醜悪だ。それでも、この世界に絶望しないで、生きることを諦めないでほしい。
最後まで読んで初めて、このメッセージが心に染みわたります。
人間の暗部をこれでもか!!と書いて、読者に「人間ってやっぱクソだな・・・」と思わせておいて、最終的には生を肯定する。教団Xとは、約600ページにも渡る生命の賛歌なのです。
ラストの松尾の語りと、沢渡の生涯についての独白を目にしたとき、思わず圧倒されました。「こいつはやばい小説だ。」とその瞬間に思ったものです。
そんなに良い作品だと思っているのに、本書の問題点は何度も言っているようにそこにたどり着くまでのハードルが高すぎることです。「〇〇〇〇~~~!!」が完全に読了の難易度を上げてしまっている。
良い小説なんですよ!ほんと!!
おわりに
私は、教団Xは名作だと思っています。
決して万人に勧められる内容でないことは間違いないです。
600ページもの大作な上に、難解な表現が多くて辟易する人もいるはずです。
俺は気にしないぜ!!ウェルカム!!って人には全力で勧められます。ぜひ購入して読んでみてください。
良い意味でも、悪い意味でも、読み手にインパクトを与える小説であることには間違いありません。
毒にも薬にもならない本よりも、こういう小説を沢山読みたいものです。
では、今日はここまで。ばいばい🦍