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日本軍兵士の主な死因は戦死ではなかった!?太平洋戦争の真実とは

Kada(@Kada_Se)です。今日はちょっと重めの本。

2019年度新書大賞において、第1位を獲得した、こちらの本です。
日本軍兵士ーアジア・太平洋戦争の現実(Amazon)

私は戦後生まれです。
当時のことは、本や教科書で読む程度のことしか知りません。

私が戦争に対して持っているイメージは
・戦闘で多くの人が亡くなった
・日本軍の首脳部により、自爆・特攻などの無茶な作戦が採用された

といった感じです。

しかし現実には、戦闘で亡くなった方々よりも、劣悪な環境による病死が圧倒的に多かったのです。

というわけで、今日読んだのは『兵士から見た』戦争の姿を書いた一冊です。

   

この本はどんな本?

310万人に及ぶ犠牲者を出した先の大戦。実はその9割が1944年以降と推算される。本書は「兵士の目線・立ち位置」から、特に敗色濃厚になった時期以降のアジア・太平洋戦争の実態を追う。異常に高率の餓死、30万人を超えた海没死、戦場での自殺・「処置」、特攻、劣悪化していく補充兵、靴に鮫皮まで使用した物資欠乏……。勇猛と語られる日本兵たちが、特異な軍事思想の下、凄惨な体験をせざるを得なかった現実を描く。

Amazon商品紹介より

買ったのは2019年の新書大賞が発表されて、書店に平積みされてた時期です。
一度読んだものの、内容をちゃんと理解したいと思って再読。

太平洋戦争で亡くなった日本軍兵士に着目し、その死の原因を追った一冊です。

戦局は4つに分類される

戦争は、その戦局に合わせて4つに分類できるそうです。
本書では、第1期~第4期という名前で紹介されています。

第1期
戦略的攻勢期

開戦から、1942年5月まで。
日本軍が、米軍、英軍、オランダ軍などを圧倒した時期

第2期
戦略的対峙期

1942年6月から1943年2月まで。
第1期の勝利で調子に乗った日本軍が、戦線を拡大。
連合軍から反撃に合う時期

第3期
戦略的守勢期

1943年3月から1944年7月まで。
米軍が戦力を充実させる時期。日本は防備を固めてそれに対抗

第4期
絶望的交戦期

1944年8月から1945年8月(終戦)まで。
敗戦濃厚になったのに、日本軍が抵抗を続けた時期。
戦争の犠牲者の9割はこの時期に集中している。

注目したいのは、第4期。

太平洋戦争で亡くなった犠牲者の数は、310万人と言われています。
そのうち、9割は1944年以降、絶望的交戦期によるものだそうです。

全然知らなかったです。本書を読んでいて一番驚きました。

兵士たちはどのように亡くなったのか

どうして犠牲者が1944年以降に集中したのか?
その理由が本書で語られています

『戦争で死亡した』というと、真っ先に思いつく理由は戦死(戦って死亡した)です。しかし実際の死因は

  • 戦病死(戦時下の衛生管理ができず、マラリア等で死亡)
  • 餓死(補給路の確保ができないまま戦地に送られ、栄養失調で死亡)
  • 海没死(輸送船に積載量を超える人数の兵士を押し込める。熱射病や船の転覆で死亡)
  • 処置(捕虜になるのを防止するため、仲間の兵士が傷病兵を殺害する)

といった、戦闘と関係ない死因が大半を占めています。
この

物資や食料が枯渇し、国の生産力が落ちているにも関わらず、日本軍が抵抗をつづけた結果です。

劣悪な兵装

また本書では、戦局が進むにつれて兵士の装備も劣化していったことも書かれています。

  • 兵士の人数を増やすため、体の弱い人や精神疾患のある人も徴兵されるようになった
  • 軍靴に鮫皮が使用された。水を吸って良く滑るため歩きにくい
  • 武器もなく、竹の水筒だけ持った状態で戦争に送られる

とまあ、想像を絶する劣悪ぶりです。

兵士たちの現実がここまで悲惨だと思って居ませんでした。
また、どうしてこんな状況になっても戦争を続けようとしたのか理解に苦しみます。

死の現場を書き起こすという事

ここまで多くの犠牲者を出した原因が、日本軍の首脳にあることは間違いないと思います。本書を読んで、非常に特殊な軍事思想があったのだと再確認しました。

ふと気になったので、現在の日本人の中で、戦前に生まれた方の人数を調べました。戦前生まれの人口は1962万人らしいです(総務省2019年度人口推計より)戦後生まれの人口は1億655万人で、全体の84.5%を占めています。戦争を体験した人は、もう全体の16%ぐらいしか残っていない。

いつか必ず戦争を経験した世代が居なくなる日がやってきます。
そんな中、どうやって戦争の現実を後世に残していくかが課題となると思います。

本書は、膨大な参考文献に基づいて書き起こされた軍事史です。
実際の死の現場について、非常にわかりやすく書かれています。
戦争の現実を後世に伝える、良書だと感じました。

そんなわけで、テーマは重めですが、戦争についての新たな発見もあり、興味深い内容が満載の一冊でした。最後までノンストップで読み終えました。おススメです。

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