日々の学びと読書をシェアするブログです

人が住まない高層ビルが乱立する中国。その理由は?

小籠包とバナナが大好き。Kada(@Kada_Se)です。

緑化ボランティア活動で、中国に1週間滞在したことがあります。
何というか、いろいろと想像を超える国っぷりでした。

そんな中でも印象深かったのが、中国の高層マンション。

都会からすこし離れて、田舎の方面に向かいました。
何の変哲もない田園の中に、巨大な高層マンションが立ってます。

当時の写真が無くて申し訳ないのですが、こんな感じ↓

中国では、『鬼城』と呼ばれています。ゴーストタウンのことです。
こういう感じの、クソデカいマンションが高速を走ってると何度も現れます。

中に人が住んでいる気配はなくてなんとも活気がない。
何でこんなマンションが立てられるのか当時は理解不能でした。

そんな、中国の驚きを解説するのがこの一冊。
本日読んだのは、『言ってはいけない中国の真実(Amazon)』です。

この本はどんな本?

1億7600万の監視カメラ、1万の検閲語

民主化なしの「超未来国家」

人口13億の「厄介な隣人」はどこへ向かうのか?

崩壊説を尻目に急速な経済成長を遂げた人口13億の大国・中国。

旧満州からチベット、内モンゴルまで、その隅々を旅した著者は、至るところで不動産バブルの副産物で「鬼城」と呼ばれるゴーストタウンに出くわす。

高層ビルが林立する超モダンな廃墟が建てられる元となった「錬金術」の仕組みに着目し、日本と異なる国家体制、組織のあり方、国民性を読み解く新中国論。『橘玲の中国私論』改題。

Amazon(内容紹介より)

著者の中国での経験を交えつつ、中国の『人間関係』『政治』『経済成長』『歴史問題』『IT事情』等々を紹介しています。

今回読んだのは文庫版です。発売されたのは平成30年。新型コロナウイルスが問題になる前です。少し内容は古くなりますが、中国を理解するための良い入門書だと思います。

様々な文献を分かりやすくまとめた総説といった感じです。

    

ひとが多すぎる社会

中国は大きい。とてつもなく。ボランティアで中国に行ったときにも感じましたが、とにかく土地のスケールがでかすぎます。

中国の人口は13.93億人(アメリカ国勢調査,2018)で、世界トップです。
もうとにかく人が多いです。

ところで、中国というとどんなイメージがあるでしょうか。ニュースなどで、『中国はマナーが悪い人が多い』みたいな感想を持っている方もいらっしゃると思います。

以前何かの雑誌でみた内容ですが。『中国に工場を作り、お金を従業員に預けたら、その従業員がお金を持ち逃げした。』みたいなエピソードを読んだ覚えもあります。

日本では考えられないけど、中国では『お金を預けたお前が悪い』という感覚が一般的です。それもそのはずで、中国は人が多すぎるので、ごく一部の周囲の人間のみ全面的に信用する文化が育っているからです。

著者の橘玲氏は、次のように述べています。

「中国人は相手を騙す」ということではない。中国の社会には「信用」という資源が枯渇している、ということだ。
その理由はものすごく単純だ。中国には、人間があまりにも多いのだ。

「言ってはいけない中国の真実」橘玲著 p37より

   

中国を理解するキーワード『グワンシ』

グワシッ!!って効果音・・・ではなく、中国には『関係(グワンシ)』という言葉があります。

これは何かというと、中国における人間関係を意味する言葉です。
といっても、日本人の感覚で言う『友達』『恋人』みたいな感じではなく、絶対的な信頼関係で結ばれた関係のことです。

広い国土と多すぎる人口を背景に、中国では郷党と宗族の人的ネットワークに頼って寄る辺ない社会を生き抜いていくライフスタイルが確立した。この人的ネットワークが、中国社会を理解するキーワード「関係(グワンシ)」だ。

「言ってはいけない中国の真実」橘玲著 p53より

中国は「関係(グワンシ)の社会」だといわれる。グワンシは幇を結んだ相手との密接な人間関係のことで、これが中国人の生き方を強く規定している。

「言ってはいけない中国の真実」橘玲著 p58より

中国では、ある人と家族同様の(時に家族以上の)絶対的な信頼を結ぶことを、”幇を結ぶ”と言います。

この幇で結ばれた人間関係のことを、「自己人(ズージーレン)といいます。そして、幇を結んでいないそのほかの人々は、「外人(ワイレン)」といいます。

中国では、「自己人」「外人」を明確なまでに区別しているため、次のようなことが起こります。

  • 幇を結んだ相手(自己人)に対しては、絶対的に信頼し、全面的に協力する
  • 幇の外の相手(外人)に対しては、親しく付き合うけれど、最終的には裏切る

中国の行動文法では、『裏切ることで得をする機会を得たときに、それを躊躇なく実行することを道徳的な悪とは考えない』とのこと・・・。日本の感覚とは少し違いますが、なるほど。と思います。

こういった文化が育つのも、理由は「人が多すぎるから」
最初に土地があり、共同体で協力する生活が中心だった日本とは違い、中国は広大で、流動性が高い。そのため、信頼関係を構築し、ライバルに先んじて利益を確保することが必要となる文化が育ったと解説されています。

鬼城ができる理由ー土地開発による錬金術

さて、冒頭のゴーストタウンがなぜできるのか。
理由は本書で解説されていますが、簡単に言うとお金を稼ぐためです。

中国は都市化に伴って、約4億人が農村から都市に移動したとのこと。4億人が住める住居が必要になります。必要な土地は、概算で400万ヘクタール。九州よりも大きな土地面積です。

そこで、周辺の地方政府(中国共産党)がやったことが以下の通り

  1. 農民からタダ同然で土地を買い取る(!?)
  2. マンションを建てる
  3. 不動産開発によって、土地の値段が上がる
  4. 仕入れ値の1000倍(!?)の値段で販売して、利益を得る

そうやって生み出された巨額のマネーは、本書ではなんと464兆円(!?!?)と報告されています。

もう何か規模がでかすぎて意味わからない

しかしながら、このお金に関わることができるのは、中国共産党をはじめとした一部の人達だけです。先ほど紹介した「関係(グワンシ)」外の人には、このお金は回ってきません。

その方法を見た他の地方政府も同じことをします。そんなわけで、中国全土で同じように土地開発をした結果、農村部のど真ん中に高層ビルが建つ事態になっている…とのこと。

しかし、実際には人は住んでいません。
近隣農民にとっては、マンションが高すぎて住めないし
高所得者はすでに都市部に住んでいる。

そんなわけで、投資家の投資対象にはなっているものの、実際に住んでいる人は皆無とのことです。ひょえー!

この本を読んで、長年の疑問が解けました。中国にいたときは「大きなマンションが沢山建っててすごいな~」ぐらいにしか思って居ませんでしたが、まさかこんな事態になっていたとは。

隣人とうまく付き合うために

中国は、すごく大きくて驚きに溢れています。中国と接したことがないと、ニュースやネットで目にしたものだけが中国のすべてになってしまうけれど、実際は凄く面白い国だと思います。

他の国に住む人々を理解するためには、相手の分化について良く知ることが必要だと思っています。

先ほどの「幇」の分化についてもそうですが、それが悪いとか、良いとかを議論することは重要ではありません。よく学んだうえで、理解してこそ良い人間関係が結べるのかなと思っています

本書は、中国の現状と国民性について知り、新しい発見をするための良書です。もちろん中国は政治が不安定だし、国家間の問題が沢山あるけれど、政治の諍いを抜きにして、そこに住む「人」を少しでも理解するための一歩になると感じます。

(余談)同著者のベストセラーの『言ってはいけない』にあやかってタイトルを改定したと思うけれど、私は前のタイトルの方が好き。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA