Kada(@Kada_Se)です。
フランスのパリ。一度でいいから行ってみたい街です。
私が持っているパリのイメージは、凱旋門、パリのエッフェル塔、洗練された街並み…って感じです。安直すぎ?
しかし、イメージとは裏腹に、暗い問題も持っています。
あいつぐテロ事件に、人種差別、難民問題…。
そんなパリで生きる人々を取材した本を読みました。
その名も、『パリのすてきなおじさん』。
パリに住む、普通のおじさんを取材した一冊です。
もくじ
難民問題、テロ事件、差別の歴史……。 世界は混沌としていて、人生はほろ苦い。 だけどパリのおじさんは、今日も空を見上げる。 軽くて、深くて、愛おしい、おじさんインタビュー&スケッチ集
Amazon 商品紹介より
「パリは人種のるつぼ、おじさんのサラダボウルだ。 読めば21世紀の隣人の姿が浮かび上がり、 クスクスも赤ワインも、より味わい深くなる。」
帯裏 推薦の言葉より
著者は、金井真紀さんです。
若いころからおじさんと接する機会が多かった著者は、おもしろい話をしてくれそうなおじさんを見つける勘がよくはたらいたそうです。
そんな「選おじさん眼」を持つ金井さんと、パリのジャーナリストである広岡裕児さんがタッグを組み、パリに住むすてきなおじさんたちを取材し、スケッチを取るという内容です。
本書は6章構成です。
- おしゃれなおじさん
- アートなおじさん
- おいしいおじさん
- あそぶおじさん
- はたらくおじさん
- いまを生きるおじさん
おじさんたちインタビューのそばには、金井さんが書いた味わい深いイラストが添えられています。このイラストが、実際のおじさんの姿を想像させてくれます。
深い。すっごい深い本だわこれ。
流石の「選おじさん眼」と言うべきでしょうか。
個性が爆発していて、どのおじさんの話も面白い。
ミラノでオーダーメイドの服を作る事を生きがいにする弁護士のおじさんがいれば、服を10着しか持たないおじさんもいる。
オシャレな画家のおじさん、骨董品の復元をするおじさん、お菓子屋のおじさん、かつら屋のおじさん、おじさん、おじさん…
そこにいるのは、たしかにパリに暮らす普通のおじさんたちです。
それでも、どうしてこんなに人を惹き付ける話ができるのか。
おじさん達は、それぞれ素敵な人生観を持っています。
インタビュー中でおじさんたちが、自分の人生について語っています。
そこで飛び出てくる、名言の数々。例えば…
人生を学んでいるあいだに手遅れになる。だから大事なことを後回しにしてはいけない。人生とはそういうものなんだと思います。
「パリのすてきなおじさん」p67, モンマルトルの老画家、アンリ・ランディエさんの言葉
「差別もテロもずーっと昔からある。これからもなくならんだろう。でもわしやあんたのような勇敢な人間もいる。」(中略)「人間を好きにならなければいかん」
「パリのすてきなおじさん」p143,競馬場に通う元警官、ムフーブ・モクヌレさんの言葉
その辺のおじさんをナンパして話を聞いて、こんな名言が飛び出してくるものなんでしょうか…。普通のおじさんたちに話を聞いて、ジーンとしたり、ホロリと感動する事になるとは思わなかったです。
一番ジーンときたのは、第五章の『いまを生きるおじさん』です。
この章の最初に出てくるのは、87歳のロベール・フランクさん。
75年前に、「隠れた子ども」だったおじさんです。
第二次世界大戦中のユダヤ人虐殺から逃れるために、身分を偽り隠れて生きてきたユダヤ人の孤児です。
実際に、ユダヤ人孤児として生きてきた方の話を聞くと、どうして人種差別が起こるのか、理解に苦しみます。
それでも、ロベールさんはこんな言葉を残しています。
「人間には、人を憎む気持ちがある。権力者がそれを奨励する」
「パリのすてきなおじさん」p199より
(中略)
「だけど、人は変わることができる。変わらなければいけない」
この言葉は、実際に経験した人間でないと絶対口にできないと思います。
家族と散り散りになり、自分だけが生き残っても、ロベールさんは前を向いて暮らしていました。
パリには、今も様々な問題が残っています。
パリの現状について、私たちはニュースやネットで流れてくる情報以上のことを知り得ません。
しかし、現実とニュースに隔たりがあるように、決して国中が悲観に包まれているわけではありません。実際に生きる人々は前を向いていました。
『パリのすてきなおじさん』は、そんな現実に生きるおじさんたちを取材して、生きている意味そのものを見出すような、そんな旅の本です。
おじさんたちは、人種も性格もルーツもバラバラ。
そんなおじさんたちの話を通して、「世界にはいろんな人が居る。世界は広い」と新たな視点を貰える本です。