
ティラノサウルスに、メガロサウルス・・・。
恐竜って、ウロコがある大きな体と、鋭い牙を持ってる姿がかっこいいよね!

近年は新たな発見が沢山あって、恐竜の体に羽毛が生えていた説があるんだよ!

えっそうなの?
「恐竜」
それは、子どもたちの永遠の憧れであり、タイムマシンが開発されない限りは決して目にすることのできない、未知の存在です。
しかし、今の子どもたちが図鑑で目にしている恐竜と、私たちが知っている恐竜とが、大きく異なっていることは知っていましたか?

私は知らなかった!!
本日読んだのは、川上和人氏の「鳥類学者 無謀にも恐竜を語る(新潮文庫)」。
恐竜に関する、新しい知見をもとに、鳥類学者が恐竜の生態系を考察した一冊です。
もくじ
鳥類学者 無謀にも恐竜を語るってどんな本?

著者の川上和人(かわかみかずと)氏は、鳥類学者です。
ここ10年の恐竜学の進展により、鳥類と恐竜の類縁関係は大きく再考されました。
鳥が恐竜から進化してきたことは、多くの研究者の共通認識となっています。
本書は、鳥類に関する知識から、鳥類の進化を再解釈し、恐竜の生態を復元することを目的に書かれました。

「恐竜が鳥の親戚ならば、鳥の生態から恐竜の生態を明らかにすることができるのでは!?」
と川上氏が思ったかどうかは分かりませんが、非常に面白い試みです。
あくまでも、鳥の研究者が現生鳥類の形態や生態を介して恐竜の生活をプロファイリングした御伽噺だと、覚悟して読んでほしい。
いうまでもないが、この本は恐竜学に対する挑戦状ではない。身の程知らずのラブレターである。
鳥類学者 無謀にも恐竜を語る(新潮文庫)川上和人著 p8より抜粋
川上氏は非常に謙虚な姿勢を貫いているけれども、本書では非常に興味深い考察が山のように出てきます。
鳥の生態から恐竜の姿を解き明かしていく、その文章の面白いこと。
恐竜という未知の生命体に憧れているのは、子どもたちだけではなく、恐竜の親戚を研究する鳥類学者も同じです。
おそらく鳥類学者の視点で書かれた、初めての「恐竜本」であり、恐竜に対する愛が詰まった一冊となっています。
恐竜像を一変させた「羽毛恐竜」。恐竜はカラフルでモコモコだった!?
一番最初に語った通り、今の恐竜図鑑と昔の恐竜図鑑は、かなり違っています。
Amazonで小学館の図鑑(私も読んだ記憶がある)を検索してみると、表紙からして違いました。

左の表紙が旧バージョンです。発売は2002年。
右の表紙が新版。発売は2014年です。

青???紫???
私が小学生だった時もう19年も前のことですが。
世間では、映画「ジュラシックパーク」に出てくるような恐竜のイメージが一般的だったと感じています。
鱗のある皮膚と、鋭い牙。色は茶色や黒・灰色が主です。
しかし、この姿はある発見によって一変します。
それが、羽毛恐竜の発見でした。
羽のある恐竜というと、鳥の先祖とされる「シソチョウ」が有名です。
近年、様々な羽毛を持つ恐竜が発見されました。

中国の白亜紀前期の地層から発見された、ミクロラプトル・グイ。
化石の探求から、前肢に飛行用の羽毛である「風切羽」がついていることが発見されました。
イラストは青色ですが、羽毛の色は玉虫色であったと推測されています。
2005年にはペドペンナ(リンク先:川崎悟司イラスト集 – 古世界の住人)、2009年にはアンキオルニス・ハックスレイ(リンク先:ナショナルジオグラフィック)といった羽毛恐竜が相次いで発見されました。
そして羽毛の化石を電子顕微鏡下で観察すれば、メラニン・カロテノイドといった色素から、身体の色を判別することができるのだとか。
こうして、恐竜の色の推測が進み、現在は赤や青、オレンジといったカラフルな色をしている恐竜がいたことも明らかになっています。

恐竜は、鳥みたいにフワフワでモコモコだったのかも!?
鳥類学者、恐竜の生態に挑む

鳥をベースに恐竜の生態を考察してみると、様々な疑問が浮かび上がります。
私が疑問に思っていたのは、恐竜の鳴き声についてです。
当然、恐竜は絶滅しているので、鳴き声を知ることはできません。
化石から、鳴き声があった(であろう)とうことを想像するだけです。
ジュラシックパークの恐竜の鳴き声「ガオー」は、肉食獣やワニをベースにしたと考えられます。
もしかしたら、「チュンチュン」かもしれないし、「ピーピー」かもしれない。
「オゴッオゴッ」の可能性もあります。

川上氏は、そんな疑問に対して次のような解説をしています。
恐竜の中でも、パラサウロロフスは骨の構造的に声が推定されており、鳴き声は「ブヲォーン」という太い音が再現されました。
また、鳥類のさえずりは、他個体のさえずりを聞いたり練習したりすることによって可能になります。
さえずりを学習する能力を持っているのは「スズメ目」「オウム目」「ハチドリ目」だけであり、恐竜がさえずりを行っていた可能性は低いと考えられるとのこと。
声を出すことは、天敵に見つかりやすいということでもあります。
音声のコミュニケーションを必要とする場面は、求愛行動である場合が多いです。
遠くまで声が届く、低めの周波数で、「プープープー」や「ポッポーポッポー」と鳴いていたのではないか?
これ、めっちゃ面白い説だと思いませんか?
もちろん真実は分かりません。
それでも、恐竜の親戚である鳥類から逆算して生態を考えることで、当時の恐竜の生態系が生き生きと想像できます。

そのほかにも、川上氏はこんな恐竜の生態についても考察しています。
- 恐竜も卵を産んで子供を育てていたなら、巣はどうやって作っていたのか?
- 鳥のように頭を前後に揺らしたり、足をそろえてジャンプするように歩いたのか?
- 渡り鳥ならぬ、渡り竜はいたのか?
- 水鳥のような、白い恐竜はいたのか?
ムムム、面白い。恐竜というものは、いくつになっても心をワクワクさせてくれます。
恐竜の化石は何の役にも立たないが、知的好奇心を満たしてくれる

しかしながら、恐竜の化石から恐竜の生態や構造が分かったからと言って、それが世の中の役に立つかというと・・・
役に立ちません。
しかし、改めて考えると、恐竜の化石がなんの役に立つのだろう。なぜ私たちは、こんなに恐竜に熱狂してきたのだろうか。恐竜化石でダイエットに成功する。否。恐竜化石で病気が治る。否。恐竜化石で女性にモテる。否。恐竜化石でクリーンエネルギーができる。否。
鳥類学者 無謀にも恐竜を語る(新潮文庫)川上和人著 p43より抜粋
しかし、そんな何も役に立たない学問にこそ、惹かれてしまうのはなぜなのでしょうか。
この学問を推し進めてきたのは人間の好奇心であり、ひとえに興味があるからです。
「宇宙で最も力強いのは幅広い興味である」
との名言を残したのはアインシュタイン(だったはず)ですが、知的興奮はこの世界を生ききる原動力にもなります。
そんな恐竜への好奇心に、鳥類の視点を持ち込むことで、リアルな恐竜像を想像させるのがすごいです。
鳥類学者による、恐竜へのラブレター。とても野心的な試みだと思います。
本書は、子どものころの科学的探究心を思い出させてくれるとともに、はるか太古の生命体の知られざる姿を浮かび上がらせる一冊です。
恐竜図鑑を読んで、はるか古代に思いをはせ、モンスターハンターよろしく恐竜と戦う想像をしていた小学生時代を思い出しました。
子どもがいれば、恐竜図鑑とこの本を参考にしながら、子どもと一緒に恐竜の生態について自由に考えてみるのも面白そうだと思います。(夏の自由研究になりそうな内容です。)
恐竜に興味がある人はもちろん、好奇心を青春時代に捨て去った大人たちも、ぜひご一読ください。